ワニが死んでも、まだ俺たち生きるらしいよ。

 

「100日後に死ぬワニ」という作品をご存知だろうか。

ツイッターやってない方はご存知ないかもしれないが、

ツイッターで一番バズってるコンテンツだ。

調べれば一瞬で出てくるよ。

 

「100日後に死ぬワニ」というのは、4コマ漫画だ。

昨日21日からちょうど100日前から始まったこの漫画は

「100日後に死ぬワニ」の100日間の日常を淡々と描いている。

アルバイトしたり、友達とゲームしたり、気になるあの子を誘ってみたり、

もうその辺の若者でしかないワニの日常が淡々と続く。

内容としては別段大したことないのだけれど、

その4コマ目の下に必ず「死ぬまであと〇〇日」と記載されている。

何気ない日常だからこそ、その文字が一層の迫力を持つ。

最近までは誰かのリツイートを見て「ああ、これね」と思っていたけれど、

10日を切ったあたりから「そういえばあの呑気なワニもうすぐ死ぬじゃん」と

思い始めてきた。自らフォローをして「100日後に死ぬワニ」の動向を

固唾を飲んで見守るようになってきた。

 

そして先日、3月20日にワニは死んだ。

死因は交通事故。と予想されている。

 

この物語の肝は「100日後に死ぬワニ」のワニを含めた登場人物は

ワニが死ぬことをわかっておらず、読者だけが知っているということ。

どこにでもありそうなポップな漫画越しに「死」を俯瞰で見ているという感覚。

これが今までにない試みだった。そういうコンセプチュアルな作品だったのだ。

と認識している。

 

死ぬ数日前くらいから考えてた。「ああ、ワニ死ぬんだよな〜」と。

ちょうどそのタイミングでワニについて考察している人が

「マヤ暦の予言の世界滅亡の日と一致する」なんて話を見かけた。

 

friday.kodansha.co.jp

「2012年くらいにそんな話なかった?」と思ったけど、

今回はどこか肯定的に感じ取っていた。

「まあワニも死ぬしな」

と考えていた。ワニも死ぬし、みんなで死ぬのも悪くないだろう。

ぼんやりそう考えていた。

というのもワニの命日の前日、3月19日は仕事が休みだったんだけど、

その日が特に楽しい休日だったのだ。

昼間は1人で自転車を走らせて図書館へ行って

読みたかった本を借りて、ダイソーで細々と欲しかったものを買い、(フックとか)

 花屋で花を買い、丼丸で海鮮丼を買ってそれを食った。

少し昼寝をして、夕方から職場の仲間と3人で

赤坂のイタリアンに晩御飯を食べに行く約束をしていた。

18時から予約してたけど「花見でもするか」となって

四谷に1時間前に集合して上智大学横のソフィア通りを

赤坂に向かって散歩をしながら缶ビールを開けた。

桜はちっとも咲いてなかったけれど、

辛うじて咲いてる桜を見つけて盛り上がったり

見晴らしのいいところで新宿方面を眺めたりして

とても気持ちのいい時間だった。

 

イタリアンでピザやサラダを食べた後、

近くにある大好きなバーに行ってチャイナブルーを飲んだ。

そこは薄暗くてすごい雰囲気のあるバーで、

カクテルも握りつぶして割れそうなくらい

口元な薄いグラスで出してくれるんだけど、それだのに

70〜80sのディスコやR&Bを2ターンテーブルでかけるような

持ち合わせた2面性が両面とも超クールなバーなのだ。

(しかもそんな至高の空間と味なのに全然高くない)

赤坂に行ったら必ずそのバーに寄る。

 

そんな幸せな時間を過ごす中、就活で疲れ果てた連れが

「100日後に死ぬワニ」の話を通して

「でもみんな一斉に死ぬなら別に今日死んでもいいな」

みたいなことを言い出した。

 

いやわかるわ。

今日めっちゃ楽しいもん。

特に後悔ないな。いつだってメメントモリだもん。

carpe diemだもん。

currentdadaism.hatenablog.com

 

 

 

そして来る3月20日。ワニが死ぬ日、世界滅亡の日。

やや二日酔いで目が覚める。

まだ生きているらしい。今日は仕事だ。まじかよ。

シコシコと働いて23時、

気づけば100日後に死ぬワニは最終回を迎えていた。

気づけばワニは死んでいた。桜舞い散る町の道路で。

そして俺は死んでいなかった。

まだ生きるらしい。マヤ文明的にもまだ世界は続くらしい。

 

そして立て続けに起こったこと。それは

「100日後に死ぬワニ」の公式ツイッター爆誕していたことだ。

 

書籍化決定!

映画化決定!

グッズイベント続々!!

 

深まる虚無感。

何かこう、「ああ、ワニ死んだなー」と感慨にふける間も無く

続々とワニ関連のご機嫌なお知らせが舞い込んでくる。

でもこれって別に悪いことでもなくて、

バズったコンテンツをテンポ良く展開していくのって

マーケティング的な正解だとは思う。

マーケティング的な正解でしかないけど。

ただ一つの特殊な「前衛的なコンテンツ」としての立ち振る舞いとしては

疑問符が残って仕方がない。それくらい「100日後に死ぬワニ」に

気持ちを持ってかれてたんだな〜と思う。

 

マヤ文明の予言も相まってスッキリ死ぬ気でいた

あの19日の休日とは…、ていうのは完全に個人的な話だけど

まあそういう公式サイトの誕生含め、

この後の流れも込みで

圧倒的なる虚無だった。

そんな「100日後に死ぬワニ」だった。やられたわ。

 

ワニが死んでも、まだ俺たち生きるらしいよ。

 

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R.I.P